柔道整復学理論
-国家試験対策-
上肢
-脱臼・肩関節脱臼-

上肢-脱臼-

肩関節脱臼

周辺解剖①

〇肩関節脱臼

記号 説明
a 肩関節
1 烏口突起
2 上腕骨
3 上腕骨骨頭
4 肩甲骨関節窩

 

2021091501

周辺解剖②

〇肩関節脱臼

記号 説明
1 上関節上腕靱帯
2 烏口上腕靱帯
3 中関節上腕靱帯
4 下関節上腕靱帯
a バイトブレヒト孔
b ローべーラー孔

 

バイトブレヒト孔、ローベーラー孔より上腕骨骨頭が前方に脱臼!

2021091502

周辺解剖③

〇肩関節脱臼 

記号 説明
1 鎖骨
2 三角筋
3 大胸筋
a 三角筋胸筋溝(モーレンハイム窩)

 

2021091503

概要・発症の多い理由

〇肩関節脱臼

概要

①肩関節の脱臼はもっとも頻度が高い。
(第2位:肘関節脱臼,第3位:顎関節脱臼)

②成人に発生し、小児ではまれ(男>女,成人>高齢>小児)

③主に介達外力(てこの作用)により発生
発症の多い理由

①関節窩が浅い

②関節包や補強靭帯に緩みがあり、関節可動域が広い

③外力を受けやすい

④関節の固定を筋肉(軟部組織)に依存している

 

テコの原理
固い棒状のもので、大きなものを少ない力で動かすことができる、または、小さな運動を大きな運動に変えることができるものである

 

2021091504

脱臼位による分類

〇肩関節脱臼

前方脱臼 後方脱臼 下方脱臼 上方脱臼

烏口下脱臼
(最多)

鎖骨下脱臼

肩峰下脱臼

棘下脱臼

腋窩脱臼

関節窩下脱臼
烏口突起上
脱臼

 

2021091505

その他の分類

〇肩関節脱臼

外傷性脱臼 外傷機転により発生したもの
反復性脱臼 外傷性脱臼後に再受傷することで関節の支持性が低下し、外力により容易に再脱臼を繰り返す状態をいう
習慣性脱臼 先天的要因により関節の支持性が弱く、一定の肢位をとると脱臼を引き起こすものである。かつて反復性脱臼の意味で使われていた。筋力により随意的に脱臼を引き起こすこともある。
弛緩性脱臼 中枢性疾患、主に脳卒中麻痺後の麻痺側が長期間の随意運動不能により、筋力低下、筋弛緩状態となり軽微な外力で脱臼が引き起こされるもの。更衣等の身体介助時に発生することが多く介護者は注意が必要である。

 

前方脱臼

肩関節脱臼

名称・画像・発生機序

〇肩関節脱臼(前方脱臼)

名称 烏口下脱臼 鎖骨下脱臼
発生機序

直達外力

後方からの直達外力

介達外力

肩関節への過度の伸展力(転倒等で手掌を衝く)

物を投げる(外転、外旋)自家筋力

 

2021091506

症状

〇肩関節脱臼(前方脱臼)

名称 烏口下脱臼 鎖骨下脱臼
症状 共通

〇健側上肢で患肢を支え、頭部を患側に傾け苦痛な表情で来院する

〇持続性脱臼痛および他動運動で激痛を呈する

〇肩峰下は上腕骨頭の移動により空虚となり、肩峰が突出して見える

〇脱臼した骨頭が腕神経叢を圧迫し、ときに麻痺やしびれ感を患肢に訴える

弾発性固定

肩関節外転約30°

肩関節外転30°以上

(ときに90°水平位)
モーレンハイム窩 消失して膨隆 消失して膨隆

骨頭位置

烏口下

(上肢は延長してみえる)

鎖骨下

(上肢は短縮して見える)

 

合併症-骨折-

〇肩関節脱臼(前方脱臼) 

1 上腕骨大結節骨折
2 肩甲骨関節窩縁骨折
(骨性バンカート損傷)
3 上腕頭骨折
(Hill-Sachs:ヒルサックス損傷)
4 烏口突起骨折
5 肩峰骨折

 

2021091507

バンカート損傷

〇肩関節脱臼(前方脱臼)

外傷性肩関節脱臼により発生した、肩甲骨関節窩の関節唇及び関節窩からの剥離損傷(バンカート損傷)をいう

これにより肩関節の前方への支持性が低下し、反復性脱臼へと移行する原因の1つとされる

 

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ヒルサックス損傷

〇肩関節脱臼(前方脱臼)

外傷性肩関節脱臼により、上腕骨骨頭が肩甲骨関節窩縁を乗り越え時、関節窩に骨頭が衝突し、骨頭側に骨性の陥凹、陥没が生じたもの

前方脱臼では骨頭後面に陥凹・陥没が生じ、再脱臼しやすくなる。

上腕骨頭の前方移動時の安定性が低下し、バンカート損傷に次ぐ反復性脱臼へと移行する原因の1つとされる。

 

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神経損傷・血管損傷・軟部組織損傷

〇肩関節脱臼(前方脱臼)

神経損傷 1 腋窩神経麻痺
(肩関節外転運動障害,三角筋部感覚異常)
2 筋皮神経麻痺
(腕橈骨筋部感覚異常)
血管損腱板損傷傷 1 腋窩動脈の損傷
(橈骨動脈の拍動消失)
軟部組織損傷 1 腱板損傷
2 バンカート損傷

 

神経損傷・血管損傷

〇肩関節脱臼(前方脱臼)

記号 名称
1 腋窩神経
2 筋皮神経
3 腋窩動脈

 

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腱板損傷

〇肩関節脱臼(前方脱臼)

記号

名称
1 棘上筋
2 肩甲下筋
3 棘下筋
4 小円筋

 

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整復法-コッヘル法-

〇肩関節脱臼-前方脱臼-

コッヘル

Kocher法
最も適応の多い整復法であるが、下方への強い牽引および槓杆作用による軟部組織の損傷、骨折の合併をまねくおそれがあるため慎重を要する

 

1 2 3 4

脱臼肢位のまま末梢牽引

牽引継続

患側上肢を体幹につけ外旋

末梢牽引継続

外旋位のまま正中線を越えるまで内転

牽引継続

前方屈曲、内旋

内旋時に整復される

 

2021091512

整復法-ヒポクラテス法-

〇肩関節脱臼-前方脱臼-

ヒポクラテス法Hippocrates

(踵骨法)下方脱臼にも応用

日本古来から利用される整復法1つ。1人整復法として最も有効とされるが、強い牽引力による軟部組織損傷および腋窩圧迫による腋窩神経損傷をまねくおそれがあるため慎重を要し、現在は第1選択されない

 

1 2 3

末梢牽引

外転+外旋
足趾を支点としながら

内転+内旋を行う

このとき整復される

 

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整復法-スティムソン法-

〇肩関節脱臼-前方脱臼-

スティムソン法

Stimson

自然整復法の1つ

腹臥位にて患肢に重りを付け、下垂して整復する方法。合併症が少なく愛護的で安全な整復法。時間を要し患者の理解が必要とされる。

 

2021091514

固定法

〇肩関節脱臼-前方脱臼-

□初期は関節可動域制限を重視、厚紙副子等の硬性材料を併用した固定を施行。

□症状の改善に伴い、固定強度を調節し、徐々に可動域制限を解除する

□伸展、外転、外旋位を避けるため、軽度屈曲、内転、内旋位にて固定
固定期間 3週間
固定例 使用材料

厚紙副子

綿花

綿包帯

三角巾

 

2021091515

後療法

〇肩関節脱臼-前方脱臼-

期間 ~1週 1週以降 2週以降 3週目
冷罨法 ★      

温熱、手技療法

(手指・肘関節運動)
  ★ ★  
コッドマン体操     ★  

固定除去

自動運動、外転・外旋運動制限
      ★

 

鑑別診断

〇肩関節脱臼-前方脱臼-

  肩関節前方(烏口下)脱臼 上腕骨外科頚(外転型)骨折
三角筋部

膨隆が消失する

肩峰が角状に突出
出血の為腫脹する
骨頭

肩峰下に骨頭を触れず空虚

関節前方で骨頭を触知できる
肩峰下に骨頭を触知できる
運動性

上腕は軽度外転位(約30°)

に弾発性に固定

肩関節の運動はある程度保たれる

軋轢音を聴取できる

 

後方脱臼

肩関節脱臼

まれ

発生機序・症状

〇肩関節脱臼-後方脱臼-

名称 肩峰下脱臼(棘下脱臼より多い) 棘下脱臼(ごくまれ)
発生機序

直達外力

前方からの直達外力
 

介達

外力
肩関節屈曲位(前方へ手を伸ばして)で転倒し手を衝いて起こる
症状 骨頭を肩峰下後方に触知 骨頭を肩甲骨の辺縁または肩甲棘の下部に触知する

 

2021091518

整復法

〇肩関節脱臼-後方脱臼-

デパルマ法

De Palma

①術者は肘関節屈曲位とし、患肢の前腕、肘関節部をつかみ、上腕長軸方向へ末梢牽引

②同時に助手は母指で骨頭を下方へ圧迫し骨頭の移動を助ける。術者は末梢牽引を継続しながら、患肢肩関節を内転して側胸壁に接近させる

③末梢牽引、内転位を維持したまま肩関節を外旋すると整復される。整復後、末梢牽引を緩めて内旋して患肢肩関節を軽度外転位にする

 

固定法・合併症

〇肩関節脱臼-後方脱臼-

固定肢位 肩関節軽度外転+外旋+伸展位
合併症 ヒルサックス損傷(上腕骨骨頭の前内方に陥没)

 

下方脱臼

肩関節脱臼

まれ

発生機序・症状

〇肩関節脱臼-下方脱臼(まれ)-

名称 腋窩脱臼

関節窩下脱臼

(直立脱臼・挙上脱臼)

発生機序 上肢の挙上時に外力を受けて発生
症状

①上腕の外転は前方脱臼より高度になる

②骨頭は腋窩に触知することができる
①上腕を挙上した状態に固定され、多くは頭に手を当てて来院する

 

2021091516

整復法

〇肩関節脱臼-下方脱臼-

垂直牽引法

①術者は背臥位とし、患者の患側頭部に両足を伸ばして対座し、片足を肩に当て、肩甲骨を固定

②患肢を徐々に上方へ末梢牽引し、同時に他方の足で腋窩部から骨頭を圧迫して整復する

 

上方脱臼

肩関節脱臼

ほとんど皆無

症状

肩関節脱臼-上方脱臼-

名称

烏口突起上脱臼
症状

①骨頭は烏口突起の上にあって突出

②非常にまれで、多くは烏口突起の骨折を伴う
※軋轢音・運動痛・皮下出血班など著名

 

2021091517

反復性脱臼

肩関節脱臼

概要

□肩関節の外傷性脱臼後、再受傷により脱臼を繰り返す

□肩関節前方脱臼後の発生頻度が高い(バンカート損傷等の影響)

□初回の脱臼が10歳から20歳の場合、合併する軟部組織損傷やスポーツの活動性が高いことから再脱臼を起こすことが多い。

 

まとめ

肩関節脱臼

  前方脱臼 後方脱臼 下方脱臼 上方脱臼
発生機序

後からの直達外力

介達外力

前からの直達外力

肩関節屈曲で転倒

前方脱臼とほぼ同じ

(上肢挙上時に外力)
ほとんど皆無
小分類

烏口下脱臼(最多)

鎖骨下脱臼

肩峰下脱臼

棘下脱臼

腋窩脱臼

関節窩下脱臼
烏口突起上脱臼
整復法

コッヘル法

ヒポクラテス法
デパルマ法

垂直牽引法

(ホフマイスター法)
 

 

おまけ

〇前方脱臼外旋位固定

①関節上腕靭帯の緊張
②肩甲下筋の伸張

 

2021091519

参考・引用

文献・書籍

①柔道整復学理論編改定第6版

②プロメテウス解剖学アトラス第2版解剖学総論/運動器系

③標準整形外科学第13版

④柔道整復師 イエロー・ノート 臨床編

⑤実践柔道整復学シリーズ 柔道整復学総論

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